「貧乏暇なし」vs「白手起家」

 中国語を教える・学ぶというプロセスの中で、日中文化の違いに改めて気付かされることがある。日本の日常に何気なく使っていることわざ「貧乏暇なし」、中国語で何といったらいいでしょう?
 中国語の慣用句「穷忙乎,瞎忙乎」は、一見して「貧乏暇なし」の訳語として近いかな、と思うかもしれない。しかし、「穷忙乎,瞎忙乎」は、空回りする、要領を得ないというニュアンスが強く、哲学チックな「貧乏暇なし」の訳語としてもの足りないのだ。
 結論をいうと、「貧乏暇なし」の中国語訳として、ことわざ・慣用句・熟語、そのどれもが思いつかず、「越穷越忙、穷人再忙也穷」と現代語による説明になってしまう。 
 実際中国では、たとえ今は貧乏でも、うまくいかなくても、努力することで必ず好転する、または成功する、という考えが主流なのである。「白手起家」という熟語、中国人なら誰でも知っているはず。「白手起家」とは、何もないところからはじまって、最終的に成功する人のことをいう時に使う熟語である。
 ことわざ・慣用句・熟語は、その国に根付いている文化をよく反映していると思う。「貧乏暇なし」vs「白手起家」、なんとも対照的であろう。日本人は、現実的で洞察が鋭いというならば、中国人は、前向きで理想を追求するというところなのだろうか。
 四字熟語は、ほとんど日中共通しているが、それぞれのことわざと慣用句を比較しながら勉強してみるのも、なかなか面白そうだ。