月餅、いかがですか?

 小さい時、月餅というものは大嫌いだった。記憶の中の月餅は、硬い、硬い、また硬いものだった。皮も硬くてパサパサなのだが、餡が、こどもの乳歯では噛み砕けないほど硬かった。しかも、ジャリジャリして、本当にに砂利を食べているみたい。今、思い出してみれば、当時の餡が、ほとんど氷砂糖だったような気がする。それも、氷砂糖のかたまりがふんだんに残ったまま。

 月餅って、そういう恐ろしいものだと思っていた。しかし、近年、中国では、いろいろな月餅が出回るようになった。庶民が暮らす地区にあるごく普通のお店でも、月餅の種類が10をくだらないほど豊富。大きさも、一口大のミニサイズから、誕生日ケーキのような大きい物までいろいろある。それに、餡が柔らかくてとてもおいしい。

 豊かになった証拠なのだろうか、人々は国内の月餅に飽き足らず、今年は、海外の中華圏から月餅を個人輸入しようとする人たちが続出。結局、税関で検疫に引っかかってしまい、処分されるという始末。


 ほとんどトラウマとなっていた私の記憶の中の月餅、物資が極度に貧しかった時代に、食べられるだけ恵まれていたかもしれない。昔と比べてみれば、いろいろな月餅を賞味できるようになった今の世の中は、どれほど贅沢なのか。いつの時代だって、心に感謝を、そんな気持ちを大切にしたい。
 
写真は、友人が手作りした月餅、ありがたくいただく。