「えっ、けんかしてたんじゃなかったの?!」

 以下は、つい最近聞いた実の話。

 

 ある週末の日、お店(この話をしてくれた人が働いている所)に、中国人のグループが入ってきた。席に座って、お話をしはじめた。もちろん、店員たちに分からない中国語らしき言葉で、しかもよ~く通る声で。

 

 店内には、他のお客さんがほとんどいなかったので、店員の注意は、自然とこの中国人グループに向けた。すると、若い女の子2人が、甲高い声で、何かについて真剣に論じていたように見えた。

 

 何をしゃべっているのかは、さっぱり分からないが、とにかく早口で、ところどころ何かを聞きただすように聞こえた。また、ところどころは、「もー!」と怒声をあげているようにも聞こえた。

 

 店員たちは、落ち着かなくなった。何故なのかって?店内でけんかでも起こったら、マズイのだ。「どうしよう?どうしよう・・・」誰か、止めに入らねば!とその時ーー、女の子2人が肩を叩きながら、「へへへ~」と笑い出した!・・・・・・「えっ?」、店員たちは顔を見合わせた。「けんかしてたんじゃなかったの?!」

 

 不思議に思って、そして焦ったその1人の店員から、この話を聞いた。推測するには、おそらく、女の子2人は普通におしゃべりしていただけだろう。でも、なぜ、けんかしているように聞こえたのだろうか。

 

 理由は、いくつか考えられる。

 まずは、中国語にはっきりした抑揚がある。いわゆる四声(4つの声調)というもの。四声の中の2声は、英語の疑問文の語尾が上がるようにトンを高くする。4声は、日本語の怒った時にいう「もー!」のように、思い切り下がる。1声は、平だが、3声は、下がって上がる。話の中に、4つの声調が次々とどんどん変わって出てくると、声調の変化がほとんどない日本語に慣れている日本人には、けんかのように聞こえることがあるらしい。

 

 もう1つは、中国語の発音の特徴から。日本語の「あ」「う」に似ている音は、中国語にもある。しかし、いずれも「あ」「う」の口より、形が大げさ、しかもしっかり声を出さないと、中国語らしい発音にはならない。

 

 そして、あまり知られていないが、もう1つ大事な文化的要素がある。中華圏文化では、人の前でこそこそしゃべるのは、よくないこととされる。こそこそしゃべっていると、聞かれて困るようなことでも?と思われかねない。中国人の間では、「大きな声でしゃべる人は、悪い人はいない」という言い方さえさる。

 

 習慣や文化が違うと、時にはえっと思うこともあるかもしれない。しかし、それのどこがどう違うのかが分かれば、へぇ、そうだったのかと、面白いと思うようになることも。